ドイツ留学報告(外傷チーム 柳澤先生)

今回ドイツのザールラント大学病院(ドイツ語: Universitätsklinikum des Saarlandes)外傷・手の外科再建センター(ドイツ語: Klinik für Unfall-, Hand- und Wiederherstellungschirurgie)において、AOTrauma fellowshipとして2021年10月4日から短期留学中ですのでここに報告させて戴きます。

ザールラント州立大学であるザールラント大学(ドイツ語: Universität des Saarlandes)の医学部とザールラント大学病院がホンブルク(Homburg)にあります。ホンブルクはドイツ連邦共和国南西部のザールラント州ザールプファルツ郡にある市で、同郡の郡庁所在地です。ザールラント州の北東にはラインラント=プファルツ州があり、南にはフランスのロレーヌ地方、西端はルクセンブルク大公国に接しています。文化圏としてはフランスの文化の影響を受けている地域です。

今回受け入れていただいたTim Pohlemann教授と筆者: ドイツ外傷整形外科のトップランナーのおひとり。1998年のエシェデ鉄道事故では現場の最前線で活動された
ザールラント大学病院。屋上にヘリポートがある。ドクターヘリは悪天候でなければ夜間も航行可能。正面やや右がERの入り口で救急車の駐車スペースが8台ある

救急体制ですが、ザールラント大学病院ではドクターカーも24時間出動体制にあります。

ドイツでは救急医という専門性は無く、麻酔科医と外傷整形外科医がシフトでドクターカー当番をしています。ドクターカーに同乗し勤務を見学させてもらえる機会がありました。

出動時、緊急車両の法定速度はありません。市街地対抗一車線130km/hrでの走行もありました。さすがAutobahnを有する国です(ちなみにドクターカーはメルセデスです)。現場活動は別出動の救急車と共にします。日本との違いを感じたのは、病歴聴取と家族搬送です。病歴聴取に関してはこちらではかかりつけ病院からの文書が詳細にあります。診断名、既往歴、検査歴、検査結果、内服薬剤など1つにまとまって書面になっています。家族や本人から上記情報を聞くよりも、書面にて確認します。また家族搬送に関しては家族を緊急車両に同乗させることは決して無いそうです。救急活動の安全が脅かされる可能性も想定してとのことで、日本とのお国柄の違いを感じました。

ER重症外傷用ベット。左に人工呼吸器とエコー。奥の扉はCT室。重症外傷ベットの脇にCT室を設置することがドイツ外傷センターで法整備されている
ER重症初療室のセントラルモニター。救急搬送事例が現況とともに掲示される。一目瞭然

 

コロナ自宅療養者の救急要請にもドクターカーで出動しました。評価では大きな問題はありませんでした。ザールラント大学病院のコロナ病床は満床、ザールラント州全体でのコロナ病床も満床のため、コロナ対応統括チームへ電話での申し送りをし、現場活動は終了しました。ドイツではコロナ禍で看護師の離職も多く、ERでの看護師の人員も少なくなり、ER業務が円滑に回らなくなってきているとの事でした。ERの診察室は多くあるザールラント大学病院ですが、ERの廊下にいくつかベットがありそこに患者さんが横になっているという現状です。ドイツでも早く患者数が減ることを願います。